→戻る

　　　　　　　　　　　哀 歓 抄（九）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　尾 崎  文 英

堅香子や阿修羅涙目見えてくる

ぬっと来て大魚となりし春の鯉

水田が天地を分けぬ父の郷

年忌後も橋渡り行く白日傘

夾竹桃家族が住みし家見えて

惜しむかに海の夕焼け人を待つ

雲秋意さだかに馬蹄来て止まる

浜菊や「鴉なぜ鳴く」しばし聞く

傷ついて少年すわる花八つ手

角巻の女人見たる日旅了る

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　（「創流」副主宰）